「くぁーー……。暑いね、今日……」

「そうだね…」

玲好君が、腕を上にあげて呟いた。私は、額の汗を腕で拭いとる。

今は、プログラム2の男子三年一、二組合同の綱引き。因みに、赤組と青組が戦っています。

「「「オーエス!オーエス!オーエス!」」」

「「「オーエス!オーエス!オーエス!」」」

最後だからなのか、三年生男子は凄い気合いが入っていた。勿論、同じ組を応援してる。…つもりです。

「勝者!青組!」

「「「うぉぉおぉおお!!!」」」

「「「……………」」」

赤組の、三年男子が啜り泣いていた。

「負けちゃったね…」

玲好君は、ガッカリした声で小さく私に話しかけてきた。

「そうだね…。でも、私達が頑張れば良いじゃん!」

「だね!」

「よーい!ドン!」

決勝まで、残った青組と白組が綱引きを始める。

「「「うぁぁあぁぁあ!!」」」

「「「うわぁぁあぁあ!!」」」

先輩達……。端から見たら凄い、怖いです……。

「何か……、先輩達怖いね……。優花さん」

「私も、そう思った……」

「俺達も、来年最後だよね……。俺達も、先輩みたくなるのかな」

「……………。想像出来るけどね」

「……………。確かに」

「来年も、ルームシェアで叶君に怒られてるのかな?」

「受験生なんだから、ちゃんと勉強しろっ!!……って、言われそう」

玲好君が、苦笑いしながらグランドを見た。

「ゲームするな、ゲーム没収するから、……。……嫌だね……。何か……」

「そう思うなら、今から勉強してよ」

後ろから、聞き覚えのある声に。私と玲好君の肩がビクッと震えた。私達が、恐る恐る後ろを振り向くと……。

怖い恐い笑顔で私達の後ろに叶君……。……いや、お叶様が立っていた。

「「……スイマセンでした……」」

「僕の悪口を体育祭で言うとか。酷いね。僕に何か不満が、あるなら直接言えば良いじゃん……?優花先輩、玲好先輩?」

とてもとても、低い声で初めて私達の名前に“先輩”を付けた……、お叶様。

「いぇ、全く不満等一つも有りません」

「むしろ、満足しか有りません!」

「…………。まぁ、どうでも良いけど。で、本題が。……あのさ、どっちかの鞄に僕の筆箱入ってない?僕の筆箱が、無いんだよね」

「筆箱ー?」

「うん。筆箱」

「ある訳無いじゃーん。あったら、ビックリだよー」

私は、椅子に掛けていた鞄の中を探す。……ん?何か、変な物が……。

私は、不思議に思って。“その”変な物を、ゆっくり取り出した。青い筆箱みたいな物。

「その筆箱、僕の」

「……………」

「ある訳無いじゃん。あったら、ビックリだよ。………ビックリしてるの、僕なんだけど?何で、優花の鞄に!僕の!筆箱が!入ってるの?!」

「さっ、さぁあ?………知りません。分かりません………」

本当に!知らない!分からない!何で?!何で、入ってるの?!

お叶様の、冷たい視線が痛い!凄い痛いです!