翠の両親は海外に住んでいるはずだ。

 そのことを母親に言ったら、それは私が連絡を常に入れているし、今のところ安定しているから大丈夫だと連絡しているとの事だ。

 うちの家族と翠の家族は仲が良く、付き合ってからというものまるで親戚のように親しい付き合い方をしている。
 
 すぐに日本に戻ってくると言ってたので、明日、明後日にはこっちに着くだろうということだ。




「ごめん」




 最初に口から出た言葉は『ごめん』だった。
 
 バスのことを思い出した。
 
 ちゃんとしっかり腕を引いて隣に置いて、前の席にさえ行かせなかったらこんなことにはならなかったのに……
 
 後悔の言葉しか出て来ないし、頭にはそれしか浮かんでこない。
 
 涙をこらえる為に拳に力を込めたけど、腕にも激痛が走り、腕が折れているということもここで初めて気がついた。
 
 翠はこんな痛みの数倍も苦しいんだ。あんな小さな体でこんな痛みを背負うことを考えると、何もできない自分にほとほと嫌気がさしてきた。

 そして、しばらく泣くこと以外何もできなかった。声を殺して泣く。涙をこらえようとしても防波堤を越えてあふれ出した川の水のようにとめどなく流れ出してきた。