「ねぇ翠…………」
「なーに?」
「……あのさ、前からこんなのあったっけ?」
「こんなのって何? 何かあるの?」
私の後ろに立ったまま意味不明なことを言う。
「これ」首の後ろを指でさする。
「首の後ろ? 傷かなんか? やだなぁ。事故の時に傷でもついたのかなぁ?」
「いや、そうじゃないと思う。傷じゃないよ。傷が残るようなら俺一生かけて責任とるし!」
「えっ」それって。ドキッとした。
「傷じゃないから安心して。なんかこうあざのようなほくろのような……」
あ、ダメだ。この感じ、自分で言ったことに気づいていないやつだ。
「く、首の後ろにそんなもん無かったと思うけどなあ」棒読み。
「まじか…………」
「亮?」
口を覆う亮に不安を覚える。
「……あのさ、こんなこと言うのあれなんだけど俺さ……あ、いいや」
「なになになになになに、そこまで言ったら言ってよ。怖いじゃん」
不安になるよ。
「お、俺さ…………絶対幸せにするから」
「………………何言ってんの? どこかで頭打ったの? 大丈夫?」
そっちの方が怖い。
今まで一度もそんなこと言ったことないのに。
すっごい望んでいたことばだったけど、言われたら言われたで不安にもなる。
「まじで」
「…………そ、えっと、ん。あり、がとう」
「おう。よかった。さ、帰ろう」亮の顔が青いのは気のせいじゃないと思う。
タクシーまで荷物を持ってくれたんだけど、そんなこと今までされたことなかった。
自分の荷物は自分で持て! って人だと思ってたけど。

