「痛いー。それに私戻れなくてもいいかもってなんかどっかで思ってるー。こっちにいてもいいよーって思ってるし。だからこうなってるのかもー」ふへ。
 
 よく分からないけど、そんな気持ちがある。

「ふざけんのも大概にしろよ。ふへって笑うのもキモいからやめろ。こっちにいてもいいとかそんなこと嘘でも言うな。っとまじで、アンジュラ何やってんだよ!」最後の方は怒鳴りに近かった。



 アンジュラ?


 今アンジュラって言った?

 
 聞いたことあるその名前。


 その名前は聞いたことがあるし、私、さっきまで一緒にいた気がする。


「アンジュラー? んー……」右手をグーにして顎におき、左手は自分の右腰辺りにおく。


 やべー、やっちまった。と小さく呟く天使。

 アンジュラってやっぱり知ってる。絶対知ってる。

 でも誰だっけ?

 忘れちゃダメなんだって気がするんだけど。

 それが誰だかどんな人だか、んー、そこでストップしちゃって最後の答えにたどり着けない。


「あのねー、それ私知ってる気がするんだよー」

「いや、それは気のせいだ。無かったことにしろ」


 気のせい? 無かったことにしろ。それもどっかで聞いたような覚えがある。


「無い無い、聞いたこと無い。いいからさっさと戻ることだけに集中しろ」

「でも、そのアンジュラ? 私、その人に会わなきゃならない気がー……んー」

「しなくてい。その気持ちは間違ってる。いや、むしろ邪(よこしま)な気持ちだ」

「なんで私の気持ち否定するの?」

「否定じゃない。答えを導いてやってんだよ。ほれ、いいからさっさと、」

「あ、あれ。待ってー、なんか変。体、なんか冷たくなってきてる」

 なんだか知らないけど、体が冷たくなってきて、意識である私の意識が遠のいて行きそうな感じ。


 更に頭がぼーっとしてきて、無意識に助けを求めていた。