耳をすませば、なんてことない、自分の携帯の着信音だ。
まなみの部屋から聞こえる自分の携帯の着信音はかなり長く鳴っている。仕事先からかもしれないので急いで階段を駆け上って部屋に戻った。
テーブルの上に置いておいた携帯のディスプレイには『まなみ』
立ったままで電話に出ると、まなみの声は震えていた。
「敏夫、今どこにいる?」
「おまえんち。家の前の薬屋に行こうとしてたんだけど?」
「すぐ、そこから出て」
「は? 何言ってんの?」
「いいから、すぐにうちから出て」
弱々しいまなみの声に敏夫は眉間に皺を寄せた。
「どうし...」
「いいから、さっさと出て!」
いきなり怒鳴られて面食らった敏夫だったが何も言い返さず、まずは言われる通りに財布だけ持って部屋を出て階段を降りた。

