「まなみさん、おはようございます。ちょっと見てもらいたいものが......見ていただけました?」 「......」 家を出たすぐそこで、赤い帽子を被ってくたびれたデニムパンツを履いた痩せた男に声をかけられた。 胸の前には茶色い角形3号(B5対応)の封筒を大事そうに抱えていた。 私はこいつの名前なんて知らない。 いつも家の前の電柱の影に隠れていて、私が出てくると挨拶をしてくる。 表情も無く、いつも青白い顔をしていた。