もうすぐ五月も終わる。

梅雨の香りは、まだ感じない。

だけど、いつだったか夕日の眩しさに目を細めた時より少し、日の照る時間は長くなってる――気がする。

その部屋のドアを開くと、中にいるのはたったひとりだった。

二人揃っていると思ったのに、ひとりだけ。

片手でプリントを持っている彼女は、私に気付くと空いてるほうの手でチョコ色の髪を耳にかけながら、微笑んでくれる。

「あらっ、加奈ちゃんよーこそー♪ どったの?」

「うーん、ちょっと時間潰しに」

「時間潰しぃ~?」

後ろ手にドアを閉めながら答えた途端、麻里亜ちゃんの表情が歪んだ。

晩ご飯がピーマンごはんとピーマンサラダとピーマンの炒め物にピーマンスープだった日の子供みたいに、口をへの字に曲げる。