「シュウってどの辺から来てんの?」


賑やかな時間が終わり、疲れた様子で店内を片付ける楓にケンが声を掛けた。


「あー…こっから15分くらいのとこ」
「マジ⁉ めっちゃ便利なとこ住んでんだな!」


ガシガシと床を磨き、深夜だと言うのに元気なケンを見て呆気に取られる。


(やっぱ、体のつくりが女とは違うのかな)


そんな楓の視線を背中に受けてたケンは、気がつく様子もなく、むしろ鼻歌なんか歌っていた。

その光景に、楓は思わず笑ってしまう。

なんだかんだ、ここには尖ってたり、チャラかったり。他の人よりも上に行こうとすることから、自分にしか興味がなかったり。
そんな男たちが大半だったから。
だから余計に、すれていない目の前の男がとても珍しくて興味が湧いてくる。


「ケンはなんでホストに…?」


ぽつりと独り言のように聞いてみた。

すると手を止めたケンが振り向き、目を丸くして楓を見た。

そしてそれからケンは目を泳がせて、何から話そうかを迷うような雰囲気だ。


「…や、言いたくないなら」
「実は、オレ…家出してきて」


楓の言葉を遮って、ケンは話し始めた。
そのくだりが、まるで自分と同じだった楓は食い入るようにケンの話に聞き入った。


「…オレ、浪人生だったんだ。18から今まで、勉強ばっかしてた」


今までのケンが別人のように、自信なさげに俯いて、淡々と話を続けてた。


「…でも結局今回もダメで。なんかもーどーでもいいかなーって」
「…それだけが全てじゃないんじゃ……」
「“それだけ”なんだよ」


楓の言葉に、初めて向ける鋭い視線。
楓はその刺さる視線に口を噤んだ。