明日なき狼達

 野島と梶は、何かに取り憑かれたかのように蓋を開けて行った。

 あっという間に全ての木箱を開け、松山達の手伝いをし、ダイヤを取り出して行った。

 興奮が収まらなかった。

 冷静さを装っている吉見ですら、よく見ると目付きが変わっている。

 マルエス扱いのコンテナはもう一つあった。同じように中を調べると、やはりダイヤが出て来た。

 ここ迄の所要時間は40分程。

 後二隻調べなければならない。

「後程、取調べ官が事情聴取に伺いますから、乗員の皆さんは、それ迄下船されませんように」

 吉見が尤もらしく言う。次の貨物船では、少し手間取った。時計の針は8時半を指している。

 最後の船に乗り込む前に、

「吉見、時間がもう余り無いんじゃないか?」

 と野島が言った。

「予定では9時頃に本物の税関職員が来る事になってます。急げば何とかなるでしょう。
 それよりも、さっきの船の時、船長が乗員に何処かに連絡させてましたから、そっちの方が気掛かりです」

「滝沢に連絡を?」

「可能性はありますね。さ、急ぎましょう」

 最後の船では、真っ直ぐマルエス扱いのコンテナを調べるからと船長に言った。難色を示してはいたが、吉見が見せた税関職員の身分証明書に、仕方無しといった感じで案内した。

 五人の男達は、黙々と作業をこなした。時間との戦いだ。

 最後のコンテナを調べ終わり、全てのダイヤを回収し終わったのは、9時を5分ばかり過ぎた時だった。

 吉見が用意して置いたワゴン車迄、皆心無しか駆け足で向かった。

 駐車場に停めてあったワゴン車に荷物を積み始めた時、吉見達とすれ違うかのようにして、本物の税関職員が貨物船に向かって行った。と同時に、一台の車が走って来た。

 吉見達の前で急停車すると、中から数人の男達が降りて来た。

 吉見はワゴン車の運転席に乗り込むや否や、まだ乗り込んでいなかった野島達をそのままにし、急発進させた。

「吉見っ!」

 ドアノブに手を掛けていた野島が、振り落とされた。

 アスファルトの上に転がる側を、鈍い音がした。パーンという、タイヤのパンクしたような音が連続した。

 車から降りて来た男達の手に拳銃があった。