児玉の言い方が、まるで少年が草野球の仲間に入れて欲しいと願う時のような感じで、思わず微笑んでしまった。

「初対面のあたし達にこうやって親切にしてくれるのはありがたいけどさ、児玉さん、結構歳なんでしょ?気持ちだけで嬉しいよ」

「加代子さん、人を見た目で判断するとえらい目に遇いますよ」

 松山が加代子に向かってそう言うと、児玉が、

「若い頃みたいにという訳にはまいりませんが、まだ身体はほれこの通り……」

「少なくとも酒浸りだった神谷さんよりかは若いかもね」

「野島さん、酒浸りだなんて、酒を出してただけです」

「お役に立ちたいんです。このまま、残りの人生をただの傍観者として過ごすよりは……」

「加代さん、いいじゃない、歳の事言ったら、此処に居る皆五十歩百歩なんだからさ」

「梶、あたしを一緒にしないの。現役引退して役立たずになったキンタマぶら下げてるあんた達と違ってね、あたしはまだまだ夜の方はバリバリなんだから。それに、何だかあたし一人が児玉さんを入れないみたいな言い方になってるけど、あたしは一言も駄目だなんて言ってないからね」

「なら、問題無し」

 松山が児玉の方を見てにこりとした。

「じゃあ、とにかく先ずは情報収拾からという事で、それぞれ分担を決めましょう」

「それならば、私は防衛省絡みで動いてみます」

「それと、船便の件も詳しく調べられるようでしたら」

「判りました」

「松山さんは、昔のツテを頼れますか?」

「渋谷に一人信頼出来る男が居る。多分、力になってくれる筈です」

「ねえ、あたし達は?」

「加代さんは、余り動かない方がいい。目立つし、会社の件とかでマスコミの目もあるからね。何か手伝って貰う時には頼むよ」

「あら、つまらないわね。仕方無い、神谷の話し相手になってるとするか」

「野島さんと私は青山の件をもう一度調べてみましょう」

「判った。本庁の連中は一切当てにならないからな……一人居た。上手く言って情報を聞き出せるかも知れない」

「何だかさ、あんた達若返ってないかい?生き生きしてるもん」

 部屋の中に皆の笑い声が溢れた。