「僕は何時迄こっちに居ればいいんですか?」

(今はマスコミが騒ぎ立ててる真っ最中だからな。まあ、それでも半年やそこらのんびりしていれば、日本に戻って来れる。儂にしたって、そう永いこと君を遠くにやって置きたく無いからな。来週、ラスベガスへ行くから、その時には合流出来る。あんまり、羽目を外さんでくれよ)

「……」

(入金の確認が取れ次第、君への報酬を振り込んどくよ)

「……宜しくお願いします」

(ラスベガスでは、久し振りに水入らずに楽しめるな。ファハハハ)

「……」

 悍ましさを感じながら、青山は電話を切った。

 何が久し振りに水入らずだ、変態ジジイめ……

 ふん、冗談じゃねえぞ、まあ見てな……

 豚野郎が……

 吐き捨てるように独り言を呟いた。

 日本語の判らないボーイは、自分の態度を詰られたのかと思ったのか、不安気な表情で青山を窺っている。

 俺は女社長とは違う。

 豚の餌にはならねえ。豚は肥太ったら喰われりゃいいんだ。

 青山は、これ迄の間、滝沢の側に居ながら、チャンスを窺っていた。

 滝沢の資産を全部は無理としても、自分が頂く……

 全部頂いたって罰は当たらない。

 俺は、それ位の代償を貰えるんだ。

 加代子の会社に滝沢が目を付け、自分を差し向けてくれた時、これが狙っていたチャンスだと青山は思った。ニシダビューティクリニックの資産を思いのままにする事は訳も無かった。滝沢の力を利用すれば、どんな手も使えた。

 問題はその後だ。時間が勝負になる。日本との時差。十数時間というタイムラグを利用し、滝沢の金をそっくり頂く。手配は出来ている。

 ラスベガスで会おうか……

 ふん、そんな日はもう来ないのさ……

 ビーチサイドにさっきから自分の方を見て意識している金髪美人が居るニューヨークのダイヤモンド取引所の開く時間迄まだ余裕がある。

 たまにはブロンドも悪くないか……

 青山はボーイを呼び、多めのチップを渡し一言、二言告げた。

 二分後、青山のビーチチェアーの横に、金髪の美人が座り、シャンパングラスを傾けていた。