既に各幹線道路には検問が敷かれていた。

 松山の運転する車が横浜インターに差し掛かろうとした時、検問が見えた。

 松山は、手前で方向を変えた。停められれば、自分達は間違い無く逮捕される。

 刑務所に行く事位どうという事は無い。だが、今捕まる訳には行かない。滝沢を倒してからなら、例え死刑の判決を受けようとも、或はその場で警察官達に射殺されようとも構わない。

 松山のその思いは同乗している浅井や澤村、そして神谷も同じだった。

 松山が車の方向を変えると、遠目にそれを見た検問の警察官が無線連絡をした。数分もせずしてパトカーが追って来た。

 松山はアクセルを緩めず走り続けた。

 途中、何度か他の車と接触しそうになった。

 脇道から脇道、それでもパトカーは執拗に追って来る。追って来るパトカーが三台になり、白バイも加わった。

 けたたましくサイレンが鳴り、拡声器の声が響く。幾つ目かのカーブで白バイが車の真横に付かれた。赤信号の交差点に進入した時、左側から右折する車が迫った。

 白バイが慌ててハンドルを切ったが、車をかわし切れず衝突した。凄まじい音と共に、交差点のど真ん中で起きた事故が玉突き衝突を引き起こした。

 車はいつの間にかみなとみらいの方に向かい、駅近くの喫茶店に飛び込んでしまった。

「松山さんっ!」

 松山の額から血が出ている。

「だ、大丈夫だ」

 四人は直ぐさま車から下り、駅に向かった。

 パトカーのサイレンが遠くだ。

「電車に乗りましょう」

 神谷の進言に皆意を唱える事無く後に従った。

 改札を抜ける四人を見た他の乗客達は、係わり合いを避けるようにして、遠巻きに恐る恐る見つめている。

 渋谷行きの車輌は、乗客も少なく、それが幸いした。

 車輌内の液晶に流れるニュースが寿町で起きた暴動を報じている。

 乗って居る間、乗務員が来ない事を祈った。

 30分後、東横線の急行は渋谷駅に着いた。