一瞬であった。

 児玉は、まるで今さっき見て来た格闘訓練の様そのままに自衛官を失神させた。

 野島と梶が失神した自衛官を物陰に運び、松山がオリーヴドラブに塗られたカーゴに乗り込み、武器弾薬庫の前に移動させた。

 神谷と加代子は周囲の見張り役。

 念の為、児玉は自衛官の身体を探り、武器弾薬庫の鍵を探したが、やはり無かった。

 施錠された鍵は壊さなければならない。

 普通の人間ならば、頑丈な倉庫の鍵を開けたり破壊する事は不可能に近いだろうが、元レンジャーの教官であった児玉にすれば、訳も無い事であった。

 ピッキング用の針金みたいな手製の金属棒を鍵穴に差し込んだ。5分ばかりで倉庫の鍵は開けられた。

 重い扉を開けると、そこには様々な武器と弾薬が山と積まれてあった。

「こんな危険な物を保管して置くのに随分と簡単に開いちゃう鍵なのね」

「新しく作られている倉庫や、もっと重要な武器の保管庫の鍵はこんなものではありません。多分、生体認証や暗証番号による方式を取っている筈です。一般武器は割と杜撰なんですよ」

「言われてみると、たまに新聞なんかに武器が紛失したりなんて記事が載るけど、これを見たら納得だね」

「無駄話しはそこ迄にして、早いとこ仕事に取り掛かろうぜ」

 野島の言葉に促されて、児玉は梶や松山達に指示をしながら武器と弾薬の運び出しを始めた。

89式自動小銃は、優れた国産の自動小銃である。

 それ迄の正式銃であった64式を更に改良した物で、軽量化を特に念頭に置かれている。

 空挺隊員用に、正規な物より銃身がやや短かくされている。

 実弾装填数36発。

 これ一丁で何人の人間が殺せるか,などといった理性的な考えは、この時の児玉達には露程も浮かばなかった。

 倉庫には、空挺隊員だけに装備されている武器が多数あった。

 アメリカのSWATも装備している近接戦闘用の自動小銃イングラム。

 児玉はそれも人数分運んだ。

 手榴弾があった。

 慣れない者が使うと自分の方が危険だ。しかし、児玉はそれも運び出し、他に自動拳銃や弾薬帯、雜嚢バックもカーゴに積み込んだ。

 無言のまま全員がカーゴに乗り込み、浅井との待ち合わせ場所に向かった。