「親栄会の方に滝沢からまだ何も動きが無い。澤村さんが殺されたにしろ、捕まったにしろ、その時点で何らかのアクションがあって良さそうなものですが、それが無い……かと言って、生きてて奴らの手に落ちてないなら、少なくとも浅井さんに電話の一本もありそうなもんだしなぁ」

「そんなもんあれこれ考えてる暇なんか無いでしょ。私達がダイヤを奪った一味であると滝沢に知られていて、その捜索を親栄会に命じてる程なんですから、とにかくもっと安全な場所に早く逃げる事が先決なんじゃないですか?」

 極度に怯えた眼差しを浅井に向けながら梶が言った。

「今、新しい隠れ家を捜させてますが、かと言って焦って此処を出て行くと奴らの監視の目に捕まってしまいます」

「だからって何時までもこんな所に居たんじゃ、奴らに捕まるのを待ってるようなもんじゃないか」

「梶さんよ、事此処に至ったら皆腹あ括るしかねえんだよ。どう転んだところで先が見えねえのなら、浅井が言うように此処でもう暫くじっと息を潜めてた方が安全だぜ」

「あんたは元刑事でいろんな凶悪事件を見たりして来たから修羅場には慣れてるだろうけど、相手はあの滝沢なんだ。日本から抜け出し青山みたいに海外に逃げたって……」

「だからおとなしく……」

「昨日迄はそう思っていたけれど、澤村さんと浅井さんが滝沢の命を狙おうとしたからこんな結果になったんだ。状況が変わったんだ!」

 少しずつ野島に梶がにじり寄り、今にも胸倉を掴まんとする位に迫った。

「蛇は頭を落とせば終いだ……」

 一人呟くように神谷が言った。

 松山がそれに頷く。

「そうですな。浅井さんもそう思ったからこそ、澤村と二人で滝沢の命を狙った訳だし。まだチャンスが無い訳じゃない」

「あんた達さ、一体何考えてんの。よれよれの老いぼれに何が出来るって言うのさ。神谷にしたって片足チンバにされてんのに、今度は足だけじゃ済まないんだよ。命が取られるんだよ!」

「姐御、どうせそう長くは俺達の寿命は残っていないさ。ならば、せめて人生最後の大花火をでっかく打ち上げたいじゃないか」

「ふん、何言ってんだい。線香花火にもなれやしないよ。たく、何考えてんだか……」