時間が気になって仕方ない。
さっきから3分おきに時計をチラ見している。
「片桐さん、さっきから時計見て何やってんすか?もう腹減ったんすか?」
高鍋さんの心ない一言。
「時間気になるんすか?」
「ちょっとね」
「あ、例の浮気性の彼の心配?」
「失礼な!」
「今日はちゃんと家にいるんすか?」
「・・・今日帰国するの」
「え?送らないんですか?」
「大切なミーティングだし」
「もう終わったじゃないですか」
「でも、一人で帰れるって言うし・・・」
お目目をまん丸くして口を半開きにする高鍋さん。
「ほんと、バカなんですね片桐さんて」
「・・・・・」ん、マジで切れちゃう5秒前かな・・・
「・・・行きますよ!」
高鍋さんは私の手を、
そのウサギなかんじからは信じられないほど強い力で掴み、
引っ張るようにしてオフィスの外へ連れ出した。
「痛い!何!」
「アホなのもたいがいにしてくださいよ」
「なんなのよ!!!!」
腕を引っつかみながらずかずか歩く。
私は為す術もなく引きずられる。
パーキングまで引っ張られた。途中で『かすみ』さんとすれ違った。
「ちょっと何やってんのよ!」
そのふりふりの可愛い服装と、内巻きにしたお嬢様的な髪型からは想像のつかないような声。
「うるさいんだよ!」
高鍋さんはウサギらしからぬ怒鳴り声で『かすみ』さんに一喝。
「きゃっ」と小さく声を発し、口の前で両手をグーにして内股になる。
・・・それができりゃ私は苦労しないんだろうなと遠ざかる『かすみ』さんを見送る。

