でも、今はそんなプライドみたいなモノよりも、胸の高鳴りの方が問題で。

異常なほどの動きをする胸の前で両手を握りしめた。


先輩との距離がだんだん近くなる。


先輩が後ろを通り過ぎる時、一瞬だけ先輩の香りがした気がした。


気のせいかもしれない。

もし本当だとしても、ほんの微かな香りだったハズなのに……。


その香りを吸い込んだだけで、胸が締め付けられる。

苦しさに似た気持ちに、思わず口をキュッと結んだ。


……なんであたし、泣きたい気分なんだろ。

先輩が近くを通ってるだけでこんな風になっちゃうなんて……。


こんなの、まるで……。


胸の前で握ってる手にギュッと力をこめた時。

先輩の香りが強まった気がした。



そして。