リョウオウの二人の家族に必ず帰ると約束し別れを告げて、空へと飛び立つ。


「しかしビックリしたなー。」

ははっ、と笑いながらトーヤが飛びながら空中で半回転する。



「サラ婆がリョウオウ近辺のリーダーだってことにビックリしたなぁ。」

そう言って笑うのはファイ。

ファイに手を引かれて飛ぶのはアズキ。



「抵抗グループのリーダーをうちのお祖母ちゃんがしてるなんてびっくりだよー!」


赤い瞳は風になびく前髪に見え隠れしている。


「あの婆さんは適任だと思うぜ?
目が歳を感じさせないほど鋭いから。」

ルグィンも珍しく口を挟む。


誰も飛ばないほどの高さを飛んでいて、まわりに誰もいないことをいいことにかなり大声で騒ぐ。

それぞれが言いたいことを口にして明るく笑う。



この先に待つ不安を掻き消すように、笑う。



そうしているといつの間にかもう見慣れたあの場所を通りすぎる。


「また花が咲いてる…。」

そんな小さな声は空気に溶けて、耳のいい彼にしか届かない。


色鮮やかな赤や青は、混乱しきったファイの心を落ち着かせる。


この山が見えてきたならもうすぐ。


もうすぐあの屋敷が見えるはずだ。



「あった…。」


出ていった数日前と変わらない、大きな煉瓦造りの屋敷が見えた。


ファイの瞳が自然と輝く。