ふたりが付き合っていたことも、それを黙っていたことも、あたしが怒れる筋合いの問題じゃない。


あたしのこの気持ちはそういうんじゃなくて、ただ、どうすればいいのかわかんないの。


お姉ちゃんにどんな態度をとればいいのかが、わかんない。


「いいの、無理しないで。だって七海が怒る気持ちはわかるもの」


お姉ちゃんは、あたしがスネている原因は、柿崎さんのことを秘密にされたからだと思い込んでいるようだった。


お姉ちゃんがそう思い込むのには、わけがある。


実はあたしたちには、お父さんがいないんだ。


あたしが小さい頃、事故で亡くなってしまった。


病気がちのお姉ちゃんと、幼いあたしを遺されたお母さんは、家計を支えるためにフルタイムでずっと働きっぱなし。


だから姉妹で助け合って生きてきた感が強いし、実際、あたしたちの絆はすごく強いと思う。


それに、あたしには花梨ちゃんていう親友がいたけれど、お姉ちゃんはこんな性格だから、悩みとかを打ち解けられるような友だちはいなかった。


だからあたしにはなんでも話してくれたし、隠しごとなんてひとつもない、本当に仲良しの姉妹だったんだ。