イケメンの微笑みって、ズルいと思う。


ただでさえ出来のよい目鼻立ちが、五割くらい増し増しで魅力アップするんだもん。ほぼ無敵じゃん!


目の前の魅力的な笑顔に思わず見入ってしまって、ハッと我に返ったあたしは慌てて答えた。


「う、うん。それじゃあたし、本当にもう行かないと。じゃあね!」


あたしは逃げるように花梨ちゃんの方へと走った。


彼と向かい合って話していることが、なんとなく恥ずかしかしい。


いくら彼が超ハイレベルのイケメンだからって、王子様以外の男の子にこんなにドギマギしたのは初めてだ。


王子様、ごめんね。


「七海ちゃん、あの人はだれ?」


花梨ちゃんが不審そうな顔でイケメン君を見ている。


あたしは、なんとなくバツが悪くて適当に返事をした。


「べつになんでもないよ。さ、集合場所に急ごう」


花梨ちゃんと一緒に歩き出しながら、ふと振り返ると、イケメン君があたしのマフラーを握り締めながらこっちを見ている。


あたしは『お互いベストを尽くそうね!』って意思表示を込めて、ピースサインをした。


すると彼も、すぐさまピースサインを返して笑ってくれた。


すごく自然なその笑顔に、なんだか胸がほっこりして、あたしもニカッと彼に笑いかけてから花梨ちゃんの後を追った。