イケメン君は、さっきから食い入るようにあたしを見つめている。


まるで珍しい生き物にでも遭遇したような表情だ。


黒水晶みたいに澄んだ目にじっと見つめられて、ちょっとドギマギしていると、後ろの方からあたしを呼ぶ声が聞こえた。


「七海ちゃーん! 先生来てたよ! 点呼とるってー!」


「あ、うん! 今行くー!」


そう叫び返して、あたしはイケメン君に向き直った。


「悪いけど、あたし行かなきゃ。ちゃんと拭けばもっと綺麗になると思うから。じゃあね」


そう言って花梨ちゃんの方へ駆け出したあたしの手首を、イケメン君が「待って!」と掴んで引き止めた。


冷えた手首に感じた温かい体温と、大きな手の力強い感触に心臓がドキンと高鳴る。


こんなふうに男の子に呼び止められるなんて初めてで、動揺した。


「な、なに?」


無意識に肩に力を入れながら振り向くと、イケメン君が微笑みながらあたしを見ている。


「本当にありがとう。受験、頑張れよ」