「これ、ぜんぶ自分の小遣いで揃えてるからさ、年中金欠で大変だよ」


「いい化粧品って高いもんね」


「昼飯を十日間アンパン一個でガマンして、化粧品買ったんだ。ファンデーション抱きしめて大喜びしてるときに、一瞬我に返ってちょっと笑った」


ファンデーション購入して大喜びする男子高校生。


たしかに笑えるかも。でも……。


「大地ってすごいね。尊敬しちゃうよ。すごく立派だと思う」


「なに言ってんだよ」


珍しく照れたように笑った大地が、あたしの肩にポンと手を置く。


「褒めてもらったお礼に、特別に七海にメイクしてやろう!」


「え?」


「今日は一番いい顔で接客してもらわないとな」


大地はボトルから化粧水を出し、たっぷりと手に広げて、その両手であたしの頬を包み込んだ。


……ドキン!


大地の手のひらに顔を包まれた瞬間、あたしの心臓が大きく跳ね上がった。


「大丈夫。俺にまかせろ」


あたしの緊張を感じ取ったのか、大地が優しく声をかけてくれた。


でも体温がどんどん上昇して顔が熱くなって、心臓はドキドキ大きく波打っている。