お姉ちゃんと柿崎さんの姿が見えなくなるまで、あたしと大地はその場からずっと動かなかった。


……すごく疲れちゃった。早く家に帰って休みたい。


トボトボと家の方向へ向かって歩き出したあたしに、大地が声をかけてきた。


「おい、どこへ行くんだよ」


「え? どこって、家だけど?」


「そっちじゃねえよ」


あたしは目をパチパチさせて大地を見た。


こっちじゃないって、こっちだよ? あたしの家は。


いくらあたしが方向オンチでも、さすがに駅から自宅の道ぐらいは覚えて……。


いや、待て。ほんとにこっちで正解だっけ?


夜道だから方向感覚狂ってるのかも?


そう思いながら慌てて周囲をキョロキョロし始めたあたしを見て、大地が大きなため息をついた。


「そこまで自分の方向感覚に自信もてないのか? 安心しろ。お前の家はそっちだ」


「?」


だって、こっちじゃないって大地が言ったんじゃん?