そして、センセイはその視線を動かさないまま続けた。
「だから、吉井も変わるよ」
その言葉の意味を理解するのに少し掛かる。
何も答えずにセンセイの横に立っていると、センセイがピアノの蓋に手を掛けながら言った。
「これからもっと広い世界で生きていくんだから」
……ああ。
私を諦めさせようとしてるんだ。
ちゃんと、誤魔化すんじゃなくて、真正面から向き合って。
そうして『やめておけ』って言ってるんだ。
私はその意図を理解すると、閉じかけたピアノの蓋を、バンッと押し返してセンセイに近づいた。
「勿論、変わりますよ」
ちょっときつい口調になってしまう。
それでも止められなかった。
「だって、“変わったから”今の私がいる」
「……?」
「初めからセンセイを追ってたわけじゃない。だけど、センセイが私をこんなふうに変えたから」
「……俺、なんかしたっけ」
私の本気の反論を、小さく笑って流そうとするセンセイの手に自分の手を重ねた。
「センセイだって、変わったよ。こうやって私をセンセイのテリトリーに入ること、許してるんだから」
そこまで言うと、センセイが私の顔を見た。
目と目が合った時に、さらに私は言う。
「答えは一通りじゃないんだから」



