「センセイって、どんな高校生だったの?」
私が聞くと、センセイは髪から手を離してまた椅子に腰を掛けた。
今度はピアノに向くように。
「どんな……って普通だよ」
「どんなふうに普通だったの?」
「単細胞」
「はぁ??」
まるで想像してなかった返しに、私はこの場の雰囲気をぶち壊す程の間抜けな声を上げてしまった。
た、単細胞……?
あまりにセンセイとは繋がらない単語に何も言えない。
「周りなんて見えてなくて、ただ思うがままに突っ走ってた」
「……うそ」
「本当。そんなにイメージ違う?」
「違う」
「即答か。ははっ。じゃあまあ……少しはそこから成長してんだな、俺」
周りを見ずに、突っ走るだなんて、あり得ない。
私の知ってるセンセイは、慎重で警戒心も強い。
何かに対して突進するなんてこと、する前に綿密に計画を練って行動するようなタイプだと思ってたし、今でもそう思う。
「なに。疑ってンの?」
センセイが意地悪い顔で私を見て言う。
「う、疑ってるわけじゃ、ないんだけど……」
ただ、想像出来ない。
「大人になるにつれて変わるもんなんだよ」
センセイが私から顔を逸らしてピアノを見つめて言った。
黒いピアノの蓋に映る自分を見ているようだった。



