「……想像と違う」
私がセンセイの背中でぽつりと漏らした。
「……漫画の見過ぎ」
それに対してセンセイが溜め息混じりに答えた。
「こういう時は、お姫様抱っこかと」
「無茶言うな。重い」
「ひどっ……!」
「…ウソ。そうじゃなくて階段なんて急で狭いとこじゃ危なくて無理だ」
淡々と言葉を交わしながら、センセイが私を運んでくれる。
「あ…その左手のドアです」
「お邪魔します」
「…どうぞ」
おぶられたまま、私はセンセイを部屋に通した。
「ここでいいか?」
「はい」
センセイがベッドに私をそっとおろしてくれる。
初めて触れたセンセイの体。
その背中が離れて行くのが惜しかったけど、そのまま私は手を伸ばせなかった。
「あ、ありがとうございます…」
「あんまりびっくりさせるなよ。意識飛んだとか、そういうのかと思った」
「…すみません」
「でも窓開いてて今回は助かったな」
あ。お母さんってば、またバタバタ出掛けてカギの確認忘れたんだ。
いつも注意してるのに。
でも今日はそれに感謝するとしよう。
私はお母さんに『ありがとう』と心で呟き、センセイを見る。
センセイはその場に立ったまま、私の後ろにある窓を眺めていた。
「あの、座って下さい…よければ」
「ああ」
なんだか変な感じ。
私の部屋にセンセイがいる。
しかも、なんかやけに話しやすいというか…。
雰囲気が昨日と全然違う。
昨日のセンセイは、あの雨のように冷たかったけど、今はこの陽射しのように穏やかな感じ。
「えー…と、なぜこんな時間にここへ…?」
私はベッドに正座してセンセイと向き合って聞いた。
するとセンセイは、じっ…と私を見てからひとつ溜め息を吐いた。



