「ほんっとーに! 自己管理なってないんだから!」


そんな小言もぼんやりとしか頭に響かない。
頭と同じく、視界もぼんやり。

ふわふわとした思考。
だけど体は重苦しい。

ピピピピッと音が聞こえると、私より先にお母さんが体温計を抜き取った。


「ほらッ! 38度もある! もう〜……今日は寝てなさいよ!」


「こほっ」と弱々しく咳をして無言で頷く。


「お母さん、今日仕事だから。一人で大丈夫そう?」
「……ん」
「そう…でも何かあったら連絡してね。とりあえず食事もここ置いとくから。あと薬もね」


カタリ、とおかゆと水と薬が乗ったトレーを机に置いてお母さんは部屋を出て行った。


…頭がズキズキする。
熱のせいか、喉はカラカラ。
だけど起き上がる気力もなくて、目を閉じた。


眠たい。
これも熱のせいかな…。

でも、胸が苦しいのはきっと熱のせいじゃない。

目を閉じていても光を感じた。

きっと、今日は雲ひとつないくらいのいい天気なんだろう。


私が居ても居なくても、みんな変わらず今日という日を過ごしてるはず。

ああ。でも、みっちゃんと水越くらいはちょっと心配してメールでもくれるかな。

……センセイは、どうだろう。

少しは責任感じたりしてくれるのかな………ありえないか。


私はそれ以上考えるのをやめた。
そして、そのまま昨日のことを思い出さないように、と静かに眠りについた。