雨、ときどきセンセイ。


少し私を見つめた後、センセイはその驚いた表情から急に一変して少し意地悪く目を細めた。

そのカオに、今度は私が目を大きくする番。


もう今までにないくらいの距離のはずなのに……それなのに。

その僅かな距離を無くしたのは、センセイ。


「……そう。今日で『最後』だ」


その言葉を聞いたのはセンセイの胸の中。

センセイの香りに包まれている嬉しい気持ちと、一方で「最後」と告げられた切なさが交錯する。

それから、私は後悔しない為に、自分に正直に動いた。


「だったら。ちゃんと、説明してください」


そう、センセイの背中にそっと手を回して言った。

言ってることは生意気なセリフ。
でも、ほんの少し声は掠れて、回している手は震えてる。


センセイは私の手も、言葉も拒否することなく、そのままの態勢で口を開いた。


「……ここで吉井と“二人で会ってる”ことを突き付けてきたから、“一度だけ”という条件で、車に乗せた」


……車に?
それがもしかしてあの日の……。


そう気付いてセンセイの胸の中から顔を上げる。

するとセンセイはずっと私を見ていたようで、すぐに目が合った。


「まさか、その“一度”をお前らに知られるなんて、ツイテないと思ったよ。まして香川先生と水越がその時お互いに気付いていたなんて、最悪だ」


溜め息混じりのそのセンセイの懺悔のような告白に、私はただ呆然とするだけ。

そして結局の原因は自分にあることに気付いて申し訳なくなる。