雨、ときどきセンセイ。



『忘れ物を取りに来ること』


そう書かれた小さなメモ紙と、それを卒業証書に挟んであったのは、あのクリップ。

手の中にあるこのメモとクリップ。

これが意味することが、こんなことだとは思えない。


そう思って顔を再び上げた。


「??!」


声にならない驚きと共に、私はつい膝を折り、しゃがみこんだ。


音楽室の中にいるセンセイと目が合ってしまった。

どうしよう。絶対、気付かれた……。


片方の手で口元を覆ってメモを握る手で胸を抑える。
そして息を殺すように、その態勢から動かずに、ただ気配を消すことだけを考える。

目を閉じ、何かを祈るように。


すると背中を向けていたドアが、ガチャっと静かに音を上げたことに、目を開けた。


に、逃げなきゃ……!


そう思ってもなかなか足が動かない。
パニックになりかけていた私の耳に入ってきたのはセンセイの声だった。


「あなたがココから出て行かないなら、僕が出て行きますから」


そんなセンセイの言葉に、ますます足が動かなくなってしまった。

視線もあげられない。
ただ、地面に転がっている石のように、私はその場に固まっているだけ。


「……真山先生、そんなに怒らなくても」


次に聞こえてきたのは香川先生の声。


『怒る』?
センセイが?


私の緊張はいつの間にか二の次になって、二人の会話の内容を探るのに集中してた。