……センセイと、香川先生!
視界に入ったのは、ピアノに向かって座っているセンセイと、私に背を向けるようにして立っている後ろ姿は、香川先生で間違いない。
どうして、香川先生が音楽室(ここ)に。
私はその小窓から瞬きもせずに中の様子を窺いながら、唇をぎゅっと噛む。
ここは……ここだけは、私だけのセンセイだったのに。
そんな感情は一方的なものだって、わかってる。
だけど。
だけど、それでもやっぱり、せめて、“自分だけの特別”が欲しくて。
それが唯一この場所のセンセイだったのに……。
落胆と、嫉妬と。そんな入り乱れた感情をどうにか抑えながら、食い入るように視線を向けてると、センセイの口が僅かに動いた気がした。
何を、話しているんだろう。
相変わらず香川先生は後ろを向いたままだから、表情も見えないし、センセイは元々表情読み取りにくい人だから、中でどんな会話しているかなんて全くわからない。
しかも防音。
これだけ静かでも、中からの会話なんて聞こえてくるはずもない。
……まさかセンセイ、わざわざこんな光景を私に見せるために?
ふ、とそんなことが頭に過ってポケットにしまってあったものを取り出した。



