ぞろぞろと体育館から教室へと引き返す。

教室に入ってから暫くすると、ぱらぱらと保護者たちが廊下や教室の後ろに立っていた。

もちろん、その中に私のお母さんもいて。

軽くアイコンタクトだけして、私は席に着いてセンセイが来るのを待っていた。


ただでさえ、人が多い教室はざわざわと静まることをしない。

けど、私は一人口を閉じ、目をも閉じて、あの音を感じる。


――センセイの足音。


「はい、座ってな」


開いていた前方のドアから、コツッと音を立てて入室すると、センセイはそう言って教壇に立った。

その声で私はゆっくり目を開ける。


「本日は、ご卒業おめでとうございます」


センセイがそう頭を下げた相手は後方の保護者へ向けて。
そんな普段見られない、かしこまった態度が、また『最後なのだ』と胸を締め付ける。

センセイの視線が保護者から私たちに切り替えられた。

心なしかセンセイも肩の力がすっと抜けたような表情になった気がする。


「よし。じゃあ早速卒業証書、渡すから」


センセイは少し砕けた口調で言った。
それも、柔らかな雰囲気で。