「ねぇ。今日は何の日か、知ってる?」


私は先に食べ終えたお弁当箱が入った袋を膝に乗っけながら聞いてみる。


「ああ……って、そういうの、普通聞くか?」


また呆れたような口調で言われたことに、自分自身、苦笑する。


「あー最後の粒ってぜってー食えねぇ……」


そして90度顔を上げて、さっきのコンポタの缶を傾けて格闘している横顔に、私は紙袋から小さな包みを取り出した。

それに気付いて、缶を降ろして言われた。


「……あからさまに、義理だな」


面白くなさそうな顔をして、それでもその「義理」だと文句を言ったものを受け取る。


「でも、私、義理も2つしか用意してないんだけど」
「2つ? それフォローになってねぇ」


明らかに機嫌が悪そうな顔で言われたから、私は嫌味を返す。


「お父さんと、水越の2つだけ」
「おとっ……“お父さん”と同じレベルかよ」


目を丸くしてそう言った後、水越はうなだれて、がっくりと肩を落としていた。
そんな姿を見て、私はまた笑ってしまった。


「梨乃ーっ」
「あ、おかえり」


そこへ走ってきたのがみっちゃん。


「どうだった?」


私がみっちゃんに真っ先にそう聞くと、みっちゃんは物凄い笑顔を私に向けてブイサインを見せた。


「う、受け取ってくれた!」
「え、それって」
「付き合うことに、なった……!」
「やったぁ!!」


私が立ちあがってみっちゃんと両手を合わせてくるくると回って喜んでると、一人冷めた水越が水を差す。


「ちっ。どーせ遠距離なんて、続かねぇ……」


言い終わる前に水越はみっちゃんに叩かれてた。