え?

いやいや。でも。待って。
私がセンセイに……? バレンタイン?

それこそ“ナシ”でしょ!


「あ。今、“でも”って思ったね?」
「う……だ、だって。いまさら」
「『いまさら』って何? その割に諦めるわけでもないんでしょ」


そう言われればそうなんだけど……。

ただ、なんだか順序がめちゃくちゃな気がして。

あんなに付きまとって、自分の気持ちだって曝け出してしまっている今、バレンタインに「すきです」って改まってチョコを渡したところで何かが変わると思えない。

しかも、なんか、“バレンタインにチョコ”ってシチュエーションに自分がなるなんて想像できない……。


ひとり頭で想像して、『ないない』と頭を軽く振る。

するとみっちゃんがその一部始終を見て呆れたような顔をしてた。


「その日は、どうせ何しても埋もれちゃいそうだし」


3年とはいえ、たった一日のイベントならやる子はやるだろうし、センセイの人気は別に3年だけじゃなく、全学年だし。

なんなら職員室でも……香川先生とかね。


「バカね! そこで埋もれないようにするのが目的じゃん」
「はっ?」
「周りと差を、ぐーんとつければ」
「えぇー……」


みっちゃんて、なんて押しが強いんだ。

やっぱり私は基本的に受け身な性格だし。自らなにか実行するなんて、今までなかったから。

……そんな私があんなふうにセンセイを追うこと自体があり得ないんだけど。


「ちょっとでも。“特別”になりたいじゃない」


センセイの“特別”に。

みっちゃんのその言葉にトクンと胸が鳴った。


――なりたいよ。