そのままカバンを拾い上げて、勢いよく音楽室のドアを開いた。
「……っ!」
「きゃ?!」
廊下に出ると、目の前に人が居て驚いた。
思わず声を上げた程。
「どうした?!」
その突然の悲鳴にセンセイが私の元に寄ってくる。
センセイが私の後ろに来て、その悲鳴の原因を見つけて口を開く。
「……水越」
私が驚いたのは、扉を開けた瞬間に目の前に居たのが水越だったから。
人がいたということと……見られていた、ということと。
それが水越だっていうことが、いっぺんにわかって動揺した。
軽くパニックになってる私はまだ何も言えずに水越を見て立ったまま。
すると、センセイが口火を切った。
「ああ。吉井と約束でもしてたのか。それは時間取って悪かった」
そんなことが聞こえたものだから、私は瞬時に振り向いてセンセイを見た。
センセイはやっぱりもう“先生”に戻っていて、涼しい顔をして、なんなら薄ら笑みを浮かべて私たちに向かってそう言っていた。
「その余裕なカンジが、ムカツクんだよ」
それを言ったのは私じゃない。
その返答にも驚いて、今度は慌てて水越の方を見る。
「ガキだと思って高みの見物でも楽しんでるのか?」
「……生徒(おまえら)の色恋沙汰になんか、興味ない」
「だったら!」
水越の押し問答にふいっと顔を逸らし、目を伏せてセンセイが答えていた。
そんなセンセイに、水越が何かを言いかけた。
「……『だったら』?」
その続きをセンセイが顔色一つ変えずに聞き返す。
「いや……なんでもない」
今度は水越が視線を逸らして小さな声でそういうと、私の腕を掴んでその場を去った。



