ひとつ、ひとつの作品を
ゆっくりと杜は見て回った
東山魁夷独特の透明感ある色使い
あの有名な白馬を描いた作品の前で足を止める
「この作品、気に入られましたか?
代表作だけあって、僕も好きですね
ただ、かの子は寂しげで
嫌だって言いますけど…」
滝川は杜が何か言葉を発するのを
制するかのように
尚も続けて話した
「今回は常設展示されてませんが…
『行く秋』、銀杏の木の絵ですけど
かの子はあの絵の方が好きだと
ここへ来る度にいつも言ってるなぁ」
一人言の様に話す滝川に、杜は
「俺も……好きだ」
と、言いそうになった言葉を飲み込んだ
かつて、二人で色んな画家の
画集を広げては、好きな絵について
語り合った日々を思い出す
その時、確かにかの子は言っていた
あの銀杏の木の絵の事を……
「少し、休みますか?」
滝川の声に
杜は一気に現実に引き戻された
「ああ……そうだな」
曖昧に返事をした杜を
滝川は誘導すると
中庭に面したところにあるソファーに
少し距離を取りながらも
二人並んで腰を下ろした
「カフェの方じゃなくて
良かったですか?」
「ああ、ここでいい
いや、ここがいい」
と、目の前のガラス張りに
なっている先を見る
そこには中庭に広がる
池があり、微かに風が吹いているのだろうか
水面を擽るように揺らしていた
「それなら、ここで話しましょう……
今回の事ですけど
かの子に会わせる前に
杜さんのお気持ちをちゃんと
聞いておきたいと思いまして」
明らかにこれまでとは違う
ハッキリとした口調で
滝川が杜に聞いた
実は杜はかの子に会うために
まず、滝川に接触したのだった
滝川は快くそれを受けたが
ただし、まずは先に二人で
会いたいと言う条件を出してきた
こうして、今
杜と滝川はここにいるのだった
ゆっくりと杜は見て回った
東山魁夷独特の透明感ある色使い
あの有名な白馬を描いた作品の前で足を止める
「この作品、気に入られましたか?
代表作だけあって、僕も好きですね
ただ、かの子は寂しげで
嫌だって言いますけど…」
滝川は杜が何か言葉を発するのを
制するかのように
尚も続けて話した
「今回は常設展示されてませんが…
『行く秋』、銀杏の木の絵ですけど
かの子はあの絵の方が好きだと
ここへ来る度にいつも言ってるなぁ」
一人言の様に話す滝川に、杜は
「俺も……好きだ」
と、言いそうになった言葉を飲み込んだ
かつて、二人で色んな画家の
画集を広げては、好きな絵について
語り合った日々を思い出す
その時、確かにかの子は言っていた
あの銀杏の木の絵の事を……
「少し、休みますか?」
滝川の声に
杜は一気に現実に引き戻された
「ああ……そうだな」
曖昧に返事をした杜を
滝川は誘導すると
中庭に面したところにあるソファーに
少し距離を取りながらも
二人並んで腰を下ろした
「カフェの方じゃなくて
良かったですか?」
「ああ、ここでいい
いや、ここがいい」
と、目の前のガラス張りに
なっている先を見る
そこには中庭に広がる
池があり、微かに風が吹いているのだろうか
水面を擽るように揺らしていた
「それなら、ここで話しましょう……
今回の事ですけど
かの子に会わせる前に
杜さんのお気持ちをちゃんと
聞いておきたいと思いまして」
明らかにこれまでとは違う
ハッキリとした口調で
滝川が杜に聞いた
実は杜はかの子に会うために
まず、滝川に接触したのだった
滝川は快くそれを受けたが
ただし、まずは先に二人で
会いたいと言う条件を出してきた
こうして、今
杜と滝川はここにいるのだった



