モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。

***


五月の初めに杜が姿を消してから
一ヶ月以上の月日が経とうとしていた

その杜は渾身の絵を描きあげた後
落ちた体力を取り戻すべく
少し休養すると
ある地へと向かった

その先は
かつて
愛して止まなかった存在のいる場所

ーーーーー長野へと向かった

都内では
梅雨入り宣言が既にあったものの
長野ではまだ梅雨入りの気配はなく

カラッとした
晴れやかな空が杜の前に広がっていた

一度も来たことのない
この地に杜は今、確かに立っていた

揺るぎない思いで
全てを終わらせるために……

しかし、杜は直ぐに
目的の場所へは向かわず
あるところへと行った

あるところとはーーーー
















「どうです?
日本画家の作品も中々でしょ」

と、言った滝川 桂一郎の声は
静かな美術館に思いの外、響いた