モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。

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秘書、湯川は黒塗りの社用車の助手席で
後部座席に深く座る
田澤 章郎に報告していた

『使用人の話ですと
どうやら、あまり食事を
取っていないようです
昼夜問わず、ほとんどをアトリエで過ごし
使用人も杜さんの姿を中々、
見ることがないと心配しておりました』

『それで』と
田澤は話の内容を楽しんでいるかのように
嬉しそうに聞き返す

その表情を瞬時にバックミラー越しに
確認した湯川は話を続けた

『はい、一応、念のため
ドクターを待機させております
何かの時に直ぐに対応出来るようにと
後、食事に関しては
簡単なものをーー
例えば、サンドイッチ等の軽食に
切り替えるよう使用人に
指示を出しておきました
必要なものもないかと
備え付けのパソコンにメールを
送りましたところ
何も要らない
とだけ返ってきました
今のところーーー以上ですが、会長』

田澤は湯川からの報告を聞くと
満足げに

『これは期待出来るぞ、湯川』

と、言った
が、次の瞬間
厳しい表情をすると

『では、先週の社の動きの、
報告を簡潔に』

いつも通りの威厳あるトーンで
聞いてくる田澤に対して湯川は
いくつになっても
仕事の鬼だなと
わからないように小さくため息をつくと

『まず、○○社との提携についての
契約内容ですが…』

テキパキと報告し始めた