隼斗さんには敵わない。
ちょっとした言い合いも淋しいと思った事さえ
彼のほんの一瞬の行動で帳消しになる。
あっという間に満たされる心に塗り替えられ
そんな彼に貪欲にも……
『もっと…』と願ってしまう私がいる。
「ほら、遅くなるぞ?」
「………はい」
私は隼斗さんに頬を撫でられ、
ニコッと明るい笑みを浮かべて、自宅を後にした。
私は外国語学部の教授の手伝いで
海外からのお客様の案内をする係。
外国語学部は語学だけでなく、
政治、経済、文化等グローバルな分野を学び、
専門知識を身につける事を目的としている。
だから、海外の教育関連のお客様も多く、
私は和服姿で案内する事を依頼された。
必修科目の時事英語の教授なだけに
無碍に断る事も出来ず……。
半日の辛抱よ!!
今日の午前中だけという約束。
同じ学部の生徒十数人で分担して…。
よし!! 頑張ろう!!