マスターの顔を見た瞬間、なぜだかホッとした。


今までのこと、これからのこと、どうやったって、この人には全部知られているんだから。


今更逃げ出そうなんて、思っていない。


もう、このモヤモヤも、昔の未練も、全部断ち切るのだ。


そのために、ここへ来た。だから…


「こんばんは。智樹、来てる?」


決意に満ちたその表情に、マスターは何かを悟ったのだろう。


一瞬、目を見開いたが、すぐにいつもの柔和な笑顔を見せて、「来ているよ」と頷いた。


良かった。


これで、終わりにできる。


お互いに目を見合わせて、その先の未来へ、一歩踏み出した。