トントン、トントン。


肩を叩く感触。落ち着く音。


薄っすら目を開けると…柔らかい笑顔を浮かべた伊澤さん。


「おはよ。ごめんな、起こして。まだ寝むいだろうけど、そろそろ着くから」


その言葉に、ハッと目を見開き、自分の置かれた状況を目の当たりする。


ヤバい、伊澤さんより眠っていた!!!


上司を差し置いて呑気に寝てるとか、全力で謝るしかない。



「すみませんっ!私、…失礼なことっ!!本当に申し訳ありません!」


ものすごいスピードで頭を下げる。


すると、


「全然。朝早くから付き合わせてるんだ。昨日も遅かったし、本当はもっと寝ててもらいたかったぐらい。気にしないで」



満面の笑みで、しかも伊澤さんの方が申し訳なさそうにしてるぐらい。


この人はホント、たまに天使かって思うぐらい寛容すぎる。


私が、もうちょっと人生甘く見てたら、今頃絶対うっかり惚れてるに決まってる。


こんな良い人、他に見たことない。