「弾かれてしまいました」
「生けるものがこの土に触れたならば、少なからず、その呪力が残っていると思ったが」
もう一度土に触れることを試みてはみたものの、ばちり、
と再びその抜けるように白い指に衝撃が走った。
これ以上われのことを探るとあらば、ぬしを呪い殺すぞよ、
とばかりに。
「清明様のお指が傷ついてしまいます。せっかく綺麗な肌なのに」
蓬丸は清明のことしか頭にないと見える。
彼女も、もうやめてくだされと言わんばかりの悲しげな表情である。
「悪意の呪力に相反するのは善意の呪力ですけれども、
まさか土にまで悪意の呪力が宿っているとは考えられませぬ」
「触れて感じたままのことを言うと、宿っているのではなく、
こびりついていると思うのだ」
「ではやはり、誰かがこちらまで土を?
やはり死人が土から出てきたというだけではないのですか?」
「――背中がぞくりとした・・・」
方術に慣れたものは、生きとし生けるものが生来より持つ呪力を感受し、
区別することができるようになる。
ようは、感受性に富んでくる。
特に悪意を含んだ呪力はどれよりも濃密、人がその感情をあらわにすれば、
常人でもわずかに寒気となって感じられる。
それほど、悪意というのは強く、特に相反する善意などという今時珍しい感情など、
稲の穂先ほど触れただけでも大いに拒絶するだろう。
それが善意を受け入れぬものであれば、だ。
感受する側の者も、それを背の粟立ちとなって、これは悪意だ、と感じる。
「悪意があるということは、
これは誰ぞの目論みでも関わっているのでございましょうか」
「死者黄泉がえり、悪意の宿る土、目論み」
断片的な言葉をつぶやくことで答えや関連事項を見出そうと考えたようだが、
清明は何も考えつけなかった。


