遠子と言ったのはもちろん聞こえた。 冴子とは、誰か。 「あなや!」 近くにいた忠親が腰を抜かしている。 「うおおおん」 ぐわりと顔を覆った物の怪は、そのまま天を突き破らん勢いで、飛び去っていった。 そこには痛ましき赤い雫と、瘴気とも呼べる呪力が残っていた。