晴明の悪点


「お前はもう少し西のほうに住んでいたろう、なにゆえここまで来た」

 やっとのことで問うたことに対し、莢はわずかばかり瞠目して見せた。

瞠目してから、儚げに眉を下げて視線を落とした。

その口元は仄かにつぐまれていて、物言いたそうであった。

そしてついに思いきり、

「あなたが、そこで突っ立っているものだから……」

 と淀みつつも言うのだった。

 びくり、と天冥は両肩を跳ね上げかけ、そこで肩に力を入れて抑え込む。

自分が動揺しているのだと悟り、己に対してむっとする。

「だからどうした」

 ふん、と天冥はわざと高らかに鼻を鳴らした。

莢が控えめな性質なのは知っている。

こういう強い物言いには弱いはず、きっと引っ込んで離れていくだろう。

本音とは正反対のことを思い立った自分に対して、憤りはない。

むしろここでこうして、莢となかなか離れられぬ己に怒りがわいてくる。

「あなたは前から、よく一人でぼうっと立っていました。

何かを思いつめているみたいに、見えるのです」

「なんだと」

「なにか物悲しげに、あなたは一人でいるとき、常にそうやっています。

だから、どうしても気になって……」