「たれぞ、泰山府君祭を執り行っているのではないか、と申されるのですね」
遠子はこくりとうなづいた。
その芳顔はどこか見知らぬ者への不気味さがあったが、わずかにはっきりとした生気が光っている。
「あの――」
遠子はちょっぴり衰微した様子の声で、窺うように清明に言った。
「少しは、役に立ったかしら」
「はいっ?」
思わず、清明は間抜けた声を上げた。
遠子は何を隠そう、末端の末端と言えど藤原の姫である。
そんな姫がなぜ、たかだか陰陽小属の役に立とうと思うたのか。
清明ほどの下級役人にはもったいない言葉だ。
だから清明も、驚愕して間抜けた声を上げてしまったのだった。
「陰陽寮も大忙しだと小耳に挟んだから、私の考えが役に立てばよいかな、と――」
「そ、そんな滅相もない・・・」
相手はただの落ちこぼれ陰陽師である。
別に牛車なりに乗ってくればよかろうに、わざわざ供もつけず簡素な格好をしてまで来てもらっては、
滅相もないの一言ではとても尽きない。
清明は困り顔で両手を意味なく振るのだった。
「少しは、役に立ったかしら」
「もち・・・」
「もちろんでございます」
清明の言葉を遮り、蓬丸が間一髪入れずして言うのだった。
「清明様ったらこんなに忙しいというのに、妖かしに、『この都の怪異を解いてくれ』などと頼まれて、
眠い目をこすって一人で夜にこの死者黄泉がえりの原因を探っているのでございます。
そんな私たちにとって、今の遠子様の話はどれだけ力になったか。
感嘆の極みにございますよ」
すべて、暴露してしまった。
たれにも心配をかけまいと黙っていたのに、結局蓬丸がその小さな口を精一杯大きく開けて、
全部喋ってしまった。
ありゃあ、と清明は目を覆う。


