牙龍−元姫−




叶うならば


もう一度、あの頃に―――…





寿々ちゃんと出逢う前に

牙龍と関わる前に

里桜と知り合った頃に

でも、寧ろ。





早苗と色鮮やかなチューリップが咲いた花壇で出逢ったあの頃に。―――――――無垢で無知で無邪気だったあの頃の私に戻りたい。





「……そんなこと、無理なのに」





自分が在りえもしない可笑しいな言っていることは自覚している。夢見がちな自分に皮肉を込めて嘲笑った。



月の光が路地を照らす。でも私の心には光が届かない。まるで抜け出せない真っ暗な闇の穴に堕ちたようだ――――‥