「ただいま…」
「…んだよ、帰って来たのかよ……」


私の家は、
煙草の臭いと、
キツイ香水の臭いが充満している。

私は、この家で
愛情を注げられた覚えが
全くと言っていい程無い。

言葉を投げ掛けても
返ってくる言葉はないお母さん。

そんなお母さんに嫌気がさし、
私が小さい頃に家を出て行ったお父さん。


愛情の無い中で
つけられた私の名前は
"愛希(アキ)"
…綺麗事だ。

大人は
綺麗事を並べるのが上手い。
だから、大人は嫌いだ。








「ちょっと…、出掛けて来る……」

やっぱり返事は無い。

私は逃げ出すように、
家を出た。