二番街のその宿は、いわばロイとアレンの“得意先”だった。
非常階段から屋上に上がって、一番上の階の、金持ちが泊まる良い部屋を狙うのだ。

強面の大男が用心棒に雇われているが、宿の周辺を見回る順序もきっちりロイの頭に入っているので、見つかりさえしなければ問題はない。

二人はいつものように、大男が通りすぎた隙を狙って、非常階段に駆け寄った。
足音を響かせないように、慎重に階段を上がる。

命綱は無し、細いロープが一本だけ。
それを屋上の手摺に結び付けて、最上階の様子を伺いながら、降りていく。


「どう、ロイ?」
「大丈夫、人の気配なし」


から、と窓を開ける音。
続いて、軽い足音が聞こえるのを待って、アレンも手摺の外に躍り出た。