人一人見当たらない町から、戦いの喧騒が聞こえる。
それがなんだか、不思議に思えた。


時々響く、ライフルの銃声。
その度に、確かに野犬たちの唸り声が、大きな一つの渦のようになって聞こえてくる。

見慣れた姿を探してアレンが走ると、戦いの場となっていた町外れから、さらに少し離れたところに、彼はいた。

自分にばかり群れが迫ってくることに気付いて、わざとニラたちから離れて来たのだろうか。

撃つのが間に合わないのか、右腕のライフルや、左手にも適当な棒きれを持って、犬を殴り付けたりしている。


それを見つけて、アレンは背後から静かに、近寄って行った。


ロイが、ふと振り返る。

犬たちを振り払った隙に、腕を上げる。
それは明らかに、アレンの方へ向いていた。