アレンは、屋上から下を見下ろしていた。
天井のそれほど高くない鍛練場と、グラウンドと、その先にはシガテラの町が見える。

家族もなく身寄りもなかったパウルは、MYの隊員たちに見送られて、さっき海へ流された。

当然、昨日の騒動でロイが拉致された現場にいた隊員たちは、全員MYから追放され、姿を消した。
今回の事件はハリーの勝手な行動で、素行の怪しいロイを疑ってのことだというのが、マルクの言い分だ。

主犯ということにされたハリーが生きているのか、どこへ行ったのかは、隊員たちは聞かされていない。
あの時、あの倉庫には確かにマルクがいたはずなのに、それを知る者はすべて、行方を眩ましてしまったのだ。

マルクの話は言い訳で、慇懃な謝罪もポーズで、ハリーを見捨てて全てを彼のせいにして逃げたのだと、わかっているのに、証拠がない。

あの場にマルクがいたのを見た人間はもはや、ロイしか残っていないのだ。