雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
ファンタジー
完
0
儚史 信/著
- 作品番号
- 765289
- 最終更新
- 2013/06/01
- 総文字数
- 162,230
- ページ数
- 221ページ
- ステータス
- 完結
- PV数
- 29,774
- いいね数
- 0
扇暦1012季 萌樹の節 その宵――
天空から見降ろせば、まるで菱形に切り取られたような遥か大陸の、南方に位置する世辞にも大きいとは云えないつつましやかな国ガルナ。
ガルナは、大陸では中小国でありながら、他のどの大国よりも強力な軍事力を持って、治安を維持していた。
別名、神の寝所と呼ばれるガルナの玉座には、その名にふさわしく、神々しいまでに麗しい帝(みかど)がついていた。
ぶっちゃけ、近隣国の愚か者どもが、帝狙いで国を手中にしようと、血迷った行為に走るほど。
だがしかし。
先に述べた通り、ガルナは大陸最強の軍事力によって、それらすべてをあっさり退けてきた。
しかして他国の誰もが、ガルナの王は神の恩寵を受けている――と信じて疑わない。
それはそうと、この話の主役は帝ではなく、その側使(そくし)であり幼なじみの月夜(つきよ)という少年である。
この月夜、産まれてまもなく捨てられた孤児という身の上であった。
それが帝の側使だった養父に拾われ、同じ年頃の第二皇子とは顔が似ていることを理由に、皇子の傍で育てられることとなった。
そもそも、宵に浮かぶ月のように輝く黄色い髪と、冬の兎の如く白い肌に赤い瞳を持つ、浮世離れした容貌が、帝の興味を引いたという。
そのことから、彼は月夜と名付けられたのだ。
月夜は物心ついてすぐに月読(つきよみ)博士となるべく教育を受け、拾われて17季の後、史上最年少で帝の側使となるのである。
その少し前に、当時の帝は崩御。
王位継承を放棄した第一皇子に代わり、第二皇子が玉座についていた。
それが現帝、十六夜(いざよい)である。
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