私の呼ぶ声が聞こえたらしく、一夜さんは目を開けてこちらを向く。

 もしかしたら、ただ目をつむっていただけなんだろうか?ぼんやりとした頭では、それさえも正確な判断が出来ない。


「里桜。食飯、食ったか?」

「ううん……まだ……」

「“蒼の森”のキッチンを借りて粥を作って来たから、それを食ったら薬を飲め」

「は、い……」


 どうして一夜さんが、私が風邪を引いて寝込んでいることを知っているのか、なんていうのはただの愚問に過ぎない。

 持たされている盗聴器を通してその事実を知り、昼休みを使ってわざわざ粥を作って来てくれたんだ。


「すみま、せん……」

「気にしなくていい。里桜はただ、風邪を治すことだけに集中しろ」


 優しく微笑む一夜さんがあったかくて、私も自然と微笑み返していた。

 私は上半身を起こし、一夜さんが作って来てくれたお粥のはいった器を受け取る。

 そういや、今の私ってパジャマ姿なんだっけ。5年前に幾度か見られているため、もう、どうも思わないけれど。

 食べようと思ったら、一夜さんがスプーンを手に取った。そして、お粥を掬い上げると、私の口元に持ってきた。